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『The Book of Tea』にある日本の美について

『The Book of Tea』は、茶道を通して、日本人の美意識や生き方、そしてこれからの東洋文化のあるべき姿を海外向けに紹介した、明治時代の世界的ベストセラー。

作者は1906年の出版当時、米国ボストン美術館に勤めた岡倉天心。語学堪能の上、西洋美術に長けた研究者でしたが、明治日本の文明開花という名の西洋化の波に激しく反発。自身の生き方や著書を通じて、日本の美に宿る“日本人の精神文化を訴え、世界に衝撃を与えたんです。

その背景として知っておきたいのは、当時の世界は、“260年間鎖国だった東洋の神秘の国ZIPANG”へ興味を持っていたこと。しかも開国30年そこそこで、世界最強のロシア軍を負かしてしまった日本。その精神構造はどうなっているのか?そんな中、『The Book of Tea』出版の7年も前に発表された日本の精神文化についてのもう一つの世界的ヒット作。それが新渡戸稲造著の『武士道』。日本、特にその強さに興味津々の世界は、“武士道は死ぬことと見つけたり”という脅威の精神性。この本を読んで「やはり日本は過激な戦闘民族。侍魂をもった恐ろしく強い近代軍事国家だ」と誤解しかけたのです。

これに対して天心は、「戦争という野蛮な行為でしか、近代国家として認められないのは非常に不味い。確かに“よりよく死ぬ”という武士道精神も大事だが、それのもっと前提、“よりよく生きる”ための深くて美しい精神文化こそが注目されるべき日本の精神性だ」として、日本の精神文化のもう一つの側面を紹介することを狙い、『The Book of Tea』を発表したのです。

天心はお茶は趣味や手習であるとともに、日本の文化全般(衣食住、芸術、文学など)へ大きな影響を与えた“宗教のようなもの”と紹介しています。

「茶道には東洋哲学(禅仏教・道教・儒教など)が取り入れられている。茶道とはこれら哲学が姿を変えたもので、キリスト教が西洋人の人格形成を支えるように、日本においては茶道がその精神性を作り出している」と言い切って紹介しています。

そして茶道をはじめ、日本および東洋の芸術文化の特徴を以下のように説明したのです。

1.煩わしい世界を生き抜く知恵

 ①あらゆるものごとを相対的に見ること 

  物事を決めつけない 枠にはめてとらえない どこかに美点を見出す

 ②不完全の美学

  優れた作品とは作者だけで表現し尽くすのではなく わざと空白を残し、

  鑑賞者が想像したり考察したりする余白を残しておくもの

2.アートに学ぶ“表現力”と“対人関係力”

 芸術鑑賞に必要なことは、作者と鑑賞者の心と心が共感すること そのために互いに謙譲の心が必要だ

 作り手は、自己顕示欲をもって作品を完成させるのではなく、相手が考察できる余白を残す

 鑑賞者は、心を空にして余計な思い込みをなくし、謙虚さを持って鑑賞し、作者の残した空白を見つけ、

 そこに自分の考察をおこして作品を完成させていく

「私たちに訴えかけるのは、腕よりも魂、技術よりも人。その作者の栄光や挫折、喜び悲しみ怒り苦しみなど、完璧ではない人間らしさに人間は感動するのである。」このように天心は、双方が譲り合い、歩み寄ってつながる東洋的芸術観を西洋へ提案したんですね。

価値感とは、倫理観と美意識。明治以前から日本に培われた美意識を一つ学ぶことができました。

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