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縄文文明の環境

環境考古学というジャンルがあるようです。これは1980年代にうまれた考古学。第一人者の安田喜憲さんの『縄文文明の環境』という本を建築家の横内先生に紹介してもらって読んでいます。

1997年初版のこの本のプロローグには、以下のような問題定義があります。

これまでの世界史はキリスト教を精神的主柱とする近代ヨーロッパ文明の地球支配を擁護するために書かれた。私達が高等学校で学んだ世界史は、近代ヨーロッパ文明を善としている。今こそその過ちに気づく必要がある。その地球支配の中で歴史の闇の中に葬り去られた弱きものの目を通してみた歴史、アニミズムに立脚した諸文明。ヨーロッパ文明に侵略され、破壊され、未開・野蛮とされた文明を再度検証し、世界史を書き換えるべきだ。アニミズムに立脚した諸文明には重要な側面がある。それは自然。

古代文明がなぜ崩壊したのか?これまでの世界史観では、あくまでも人間しか見てこなかったから、部族間の抗争をその原因とした。しかし、自然、さらには森や気候を通してみることが実は重要だ。なぜなら、人間の営みは自然との関係を抜きに存在し得ないから。

もしもこのまま地球の人口が増加し続け、森林破壊が進んだ場合、2020年頃にきっと食糧難が弾き起こるのではないか?そうなると途端に現代文明は危機を迎えるというのが、私たちの予測である。この危機を目前に、危機を回避するために過去の教訓から学ぶため、世界史を自然との関わりから再度検討し直す必要がある。環境考古学は、過去から現在そして未来を見続ける学問である。

2023年の現在、確かにいろんな意味で危機的状態です。ウクライナ戦争、気候問題、砂漠飛びバッタなど、食料問題は今後世界共通の大問題になるでしょうね。1997年に縄文研究のなかに、このような未来への示唆があったんですね。

気になるのはこの本のタイトル。“縄文文明”という言葉。文化ではなく、“文明”なんです。国家や都市・神殿があって、祭祀を司る王がいて、金属器や文字が発明されて初めて文明誕生とされた80〜90年代の当時、学会では文明と捉えることはタブーだったようです。そのような中、著者は、

「都市革命のみが文明の定義ではない。その証拠に都市文明は自然との共存という点においてゆきづまった。そうして王による税の搾取、大量殺戮などを通して滅びていった。都市や文字・金属器だけを文明とする歴史観では、21世紀の人類の未来を切り開く教訓に出来ない。今問われるべきなのは、文明の価値観の転換、新しい文明概念の創造。文明の反対は未開・野蛮であるが、日本の歴史のなかの100世紀以上続いた縄文ははたして野蛮で未開だったのか?否である。したがって、縄文とはつまり、自然=人間循環係の文明なのである。」

と言い切っています。面白い学説ですよね。

縄文を文明とするとこんな特徴があるそうです。

 ・狩猟/漁撈/採集を生業の基本とした

 ・平等主義に立脚した社会制度

 ・情報伝達手段としての文字を持たなかった

 ・土器づくりに異常なほど執着した

 ・女性中心の文明原理

 ・アニミズム(全てのものに神を宿すとの考え)

 ・他文化や異文化との融合を容易に受け入れる

 ・大規模な木造建築の技術

世界の4大文明と言えば、メソポタミア文明、エジプト文明、インダス文明、黄河文明。しかしこれらは全て砂漠となって滅びましたね。縄文が文明と認められたならば、最も古く、最も続いている文明なんです。

そう。なんと、自然との共生・循環の中、平等・融合・女性中心のこの文明原理は、開発が進んだとはいえ未だ豊かな自然あふれるこの小さな列島で脈々と現代まで続いているのです。

一万年以上にわたって栄えたこの文明。人口爆発と食糧難の中、この地球で生き延びねばならない私たち現代人にとって、これからさらに求められるべき文明原理!

私は一木造建築屋として誇りに感じるばかりです!

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