
私の知り合いの講演会に行ってきました。その人の話を紹介してみたいと思います。
本物とは超一流の技術+超一流の人間性を兼ね添えた人物である。
昔のNHKスペシャルで、イチロー選手の身体能力の凄さを世界のプロたちが驚嘆したシーンがあった。
マリナーズとヤンキースとの試合、相手はペティット投手。ワンストライクの2球目、ストレートのフォームで投げた。イチローはそのフォームでストレートを打つ体制に入る。が、球が手から離れる瞬間に指を変化させて、カーブに変えた。次の瞬間、イチローが反応したそうです。球種が変わったと察知したと同時にバットを止め、最初の位置に戻し、カーブ打ちの体制に変えて見事にヒットを打ったとか。瞬きほどの瞬間にこの神技。観客は誰も気づかない。しかし両チームの選手たち、ヒットを打ったイチローにヤンキースのベンチまでが拍手喝采した。イチローの身体能力は神の領域だと大リーガー達が認めた瞬間だったとか。
まだあった。イチローはバントの構え。3塁手は前進で構えるが、球が投げられた瞬間にイチローは構えを戻して3塁手の脇を抜く外野ヒット。試合後インタビューで、「あれは狙って打ったんですか?」との質問に、「あんなこと、狙ってできるわけないじゃないですか」とイチロー。「ではあれは偶然?」との答えには、「あんなの偶然で出来るわけないでしょう」と答えた。狙ったわけでもなく、偶然でもない。イチローはそれとは違う、別の領域で闘っていたのでしょう。
2009年のWBCの宮崎キャンプで生のイチローを見た。彼の持っている「気」のものすごさに圧倒されたとしか言いようがなかった。そして、その「気」に触れ、それをもらったと感じた。
私たちの持っている「気」は時に病み、時に消沈したり、時に揺らぎます。だから「本物」から「気」をもらう。「気」はテレビからは伝わらない。だから生で見に行く必要がある。とその方は語っていました。
どんな仕事をするにしても「本物」に触れたことのある人と、見たことも触れたこともない人とでは大きな差がある。「本物」に触れた人でないと本物志向にはなれないもの。
大工は常に本物の木材に触れます。プランを練り、加工図面と施工図面をひき、木材を加工して、住宅として形にしていくのがいつもの仕事。木材のことは大工に聞け。私が子供の頃からやってきたことです。