九州の「九」の字が残った理由は、九州という名前が現在の行政区画とは異なる、歴史的な地域区分に由来しているためです。
九州という名前は、現在の福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県の7県に、かつて筑前国と筑後国が分かれていた時代に、それらを合わせて「九つの国」があったことに由来します。
より具体的に、歴史的背景と現代の県の旧国名を絡めて解説します。
九州の「九」の字が残った歴史的背景
「九州」という名前は、奈良時代から平安時代にかけて確立された律令制における行政区画「令制国（りょうせいこく）」の数に由来します。現在の九州地方には、以下の9つの令制国がありました。
- 筑前国（ちくぜんのくに）：現在の福岡県の一部
- 筑後国（ちくごのくに）：現在の福岡県の一部
- 肥前国（ひぜんのくに）：現在の佐賀県と長崎県の一部
- 肥後国（ひごのくに）：現在の熊本県
- 豊前国（ぶぜんのくに）：現在の福岡県の一部と大分県の一部
- 豊後国（ぶんごのくに）：現在の大分県の一部
- 日向国（ひゅうがのくに）：現在の宮崎県
- 大隅国（おおすみのくに）：現在の鹿児島県の一部
- 薩摩国（さつまのくに）：現在の鹿児島県の一部
これらの「九つの国」が存在したことから、この地域全体を指して「九州」と呼ぶようになりました。
明治維新後の廃藩置県によって、これらの令制国は廃止され、現在の都道府県に再編されました。この再編の際に、上記の9つの国が現在の7つの県に統合されたため、現在では九州地方の県は7つとなっています（沖縄県を含めると8県と数えることもありますが、地理的な「九州島」という意味合いでは7県です）。
しかし、一度定着した地域名称は強力で、たとえ行政区画が変わっても、歴史的な呼称が残り続けることはよくあります。「九州」もその典型例であり、「かつて九つの国があった地域」という意味合いで、現在もその名前が使われ続けているのです。
現代の県の旧国名との関連
現在の九州の7県と、かつての令制国を対応させると以下のようになります。
- 福岡県: 筑前国、筑後国、豊前国の一部
- 佐賀県: 肥前国の一部
- 長崎県: 肥前国の一部と壱岐国、対馬国（これらも九州の一部ですが、9国には含まれませんでした）
- 熊本県: 肥後国
- 大分県: 豊前国の一部、豊後国
- 宮崎県: 日向国
- 鹿児島県: 薩摩国、大隅国
このように、いくつかの県は複数の令制国を統合して成立しています。例えば、福岡県はかつての筑前国、筑後国、豊前国の一部を統合していますし、佐賀県と長崎県は肥前国を分割した形になっています。
結論として、九州に「九」の字が残っているのは、現在の県の数ではなく、過去の律令制における九つの令制国が存在したという歴史的事実に由来しています。時代が変わり行政区分が再編されても、地域を指す固有名詞としての「九州」が定着し、その歴史的な意味合いとともに現代まで受け継がれているのです。
ヤマヒロ新築事業部企画設計課築山大祐
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